浮競技場

東京、そして世の中のあちこち, 2016—2017

「東京オリンピック・オデッセイ」の背景となったプロジェクト

20世紀が誇る素晴らしい建築プロジェクトが始動した輝かしくも純粋なる公共プロジェクト(その多くはクローズドシステムの誤謬をあばいた近代思想を反映したものだった)の時代から半世紀が過ぎた今日において、いわゆる「偉大なプロジェクト」と呼ばれるものが自己中心的・近視眼的姿勢の具現であることを目の当たりにすると、全くもって興ざめた気分になってくる。

1950年代後半ーナショナリズムのもたらす最悪の事態により世界が崩壊寸前の危機に陥ってから10年余りが過ぎた頃ー東京が1964年のオリンピック開催地に選ばれた。この機会に国家を挙げて立ち上がった日本は、オリンピックという国際的はれの舞台で集団的精神の持つポジティブな力を世界に知らしめることに成功した。

「創意に溢れた官僚とアクティビスト国家の力強い支援を受け、性質の大きく異なる建築家たちが自分たちの夢を実現するために力を合わせた。」
—レム・コールハースとハンス・ウルリッヒ・オブリスト著「プロジェクト・ジャパン」より引用

時代錯誤

東京が2020年オリンピック開催地に選ばれた2013年までの数年はこれとは異なる時代だった。戦後日本という枠組みをリセットしたことで相互依存的有機体としての社会を見直す必要性が生じ、利己主義と自己満足主義が舵取り役となっていた。

象徴的な虚勢世代から選ばれた誇らしげなオリンピック委員会のメンバー達がスタジアムの企画に乗り出した。意気揚々と胸を張り、目はしっかりと収益をにらみながらも、救いようのないほど大袈裟な「新」スタジアムの設計図という落とし穴に足を踏み入れた(彼らにとって既存のスタジアムを利用するという選択肢はなかったようだ)。再び新時代を呼び込むための千載一遇のチャンスだったにもかかわらず、委員達は21世紀の新たな障害を乗り越えんとばかりに、旧スタジアムを容赦無く取り壊し、旧態然とした独創性に欠く解決策をぶち上げようとした。

国際コンペが開かれ、このコンペが偉大なる創造につながるとの誤謬を暴く代わりに、当代の名だたる建築家たちは従順なる建築案を提出した。

日和見主義

おそらく最も大仰だと思われる設計案が最優秀賞に選ばれたとき、今の今まで御輿担ぎの張本人だった者の多くが、まるで気づかぬうちに事件に巻き込まれたのだと言わんばかりに、このようなエクストラバガンザ(奇抜なショー)の行き過ぎに仰天し、悲鳴をあげたのだった。

そしてその悲鳴は天に届いたようだ。2年後、代替案を実行してもオリンピック開幕に間に合うことを非公開に検証した後、コンペ最優秀賞に選ばれた設計案は白紙撤回され、形式上のコンペにより費用を抑え、既成概念に沿った形の「新建築案」が募集された。興味深いことに、条件の再調整のおかげで既存の国立競技場への暫定的アドオンという選択肢も現実味を帯びてきた。しかし時はすでに遅し、数ヶ月前から競技場の解体は始まっており、作業は完了しつつあった。

ヘテロトピア(異空間)

「船は素晴らしい異空間である。文明の世にボートがなければ夢は干からびてしまう。」
—ミシェル・フーコー

この悲喜劇の舞台に最後まで立っていたのは「凡庸」という名の役者だったことを痛感した時、我々の心は差し迫る現実を飛び越え、明るい未来想像図を描き始めた。そんな架空未来では、他にも多くのより良識的な設計案が思い描かれたが、圧倒的で不必要な恒久性というお荷物を捨て去るには、この案が最適であると思われた:場所のないスタジアム。今後多くの招致国が真似をするであろう、東京により東京のために造られた(水上)競技場…

(翻訳:山尾暢子)

 

東京、そして世の中のあちこち, 2016—2017

Type

公共, スポーツ, 文化施設

Status

計画案

Team

フロリアン ブッシュ, 山野友嵩, マックス マデック, ジェイミー エデン

構造: ARUP

Size

全長: 269.72 m

最短: 194.96 m

満載喫水線: 226.34 m

高さ(乾舷): 36.44 m

満載喫水: 9.66 m

全高さ: 46.10 m

観客席: 60,000 座席 + 20,000 立ち席(屋上) (+ 周辺のあらゆる建築物)

Structure

鉄骨造
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