金門フェリーターミナル
台湾、金門島, 2014
コマーシャリズムによる緊張緩和
かつて20世紀のイデオロギー二極化の象徴だった金門島は、その役割を脱皮し、物理的・政治的な「中間地点」とも言える場へと進化した。
台湾の領土である金門島は、地理的には中国本土に非常に近く、度重なる二国間危機のバトルフィールドとしての立場に甘んじてきた。そんな金門島もここ数十年で対立の最前線から緊張緩和の仲介役へと変貌を遂げた。ここでいう緊張緩和は、ヨーロッパの冷戦終結を招いたような政治的緊張緩和とは異なり、商業主義(コマーシャリズム)の力によって中国、台湾の歩み寄りを促すもので、金門島はまさにこの種の緊張緩和のメインステージであった。
停滞の打破
コマーシャリズムを通じた緊張緩和の過程で、金門島が、効果的かつ持続的に地政学的こう着状態を打ち破ることに成功したことは、実に興味深い副産物ではなかろうか。軍事攻撃に備えて掘られたはずの数々のトンネルは、ショッピングの黄金峡へアクセスするためのゲートウェイと化しており、島全体が商業活動を通じた深い親交を大歓迎する準備を整えているようだ。
ショッピングモールとしての島
島全体が免税区に指定されたことから、金門フェリーターミナルは中国本土から到来する熱心な買い物客のゲートウェイとしての役割を果たすことになる。
FBAでは、規制なき商業時代における究極のショッピングゲートウェイという立場を新たな金門のプロトタイプと位置づけ、到着・出発の出入りを堅苦しい入国審査のプロセスから解き放ち、あえて境界線を固めない緩やかなフローの「中間地点」としてデザインすることを提案した。チェックイン、搭乗、下船、買い物、支払い、散歩など、ありとあらゆる人の流れが交差して、海陸ひとつながりの空間に流れ込む。
金門レガシー
テラン・ヴァーグから無個性な人工地盤へと変えられたこの土地は新たな存在意義を見出し、これを礎に構築環境へと変貌を遂げた。
紛争の対象という立場を超えた存在感を常に保ってきた金門島と同様に、新フェリーターミナルも国境に立つ建造物という枠を超え、過去と未来、確実性と好奇心、伝統と最新鋭の文化を自由闊達な人々の対話の中で繋げる橋渡しとして成長することだろう。
出来事の舞台としての海
金門フェリーターミナルは、従来の出国・到着の二元論を超える場所だ。一方通行の流れに抵抗し、常に歓迎の心で手を差し伸べ流布するミリューとしてのフェリーターミナル。海と陸、固定と流動のはざまで移行帯の役割を果たす。
変容を常とする多義的事象の舞台であるこの海に在って、21世紀の金門は様々な可能性を招致する真の橋渡し役を果たすことになろう。そんな場所で、短絡的な慣例は意味を失う。
(翻訳:山尾暢子)
台湾、金門島, 2014
Type
Status
Team
フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 山脇ももよ, 宮本哲, 髙橋卓, A. ヴァクセレール
設備: ARUP
構造: ARUP
環境: ARUP
施主: Kinmen County Government
Size
延床面積: 35,500 m²
Structure
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publications
関連プロジェクト:
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