木曽町役場本庁舎
中部地方木曽町, 2017
名声
長野県の山あいにある小さな町、木曽は、江戸時代に京と江戸を結ぶ道として栄えた五街道の一つ、中山道六十九次の中で最も有名な宿場といえよう。
中山道という戦略的地の利もあり、木曽は、国内有数の木材の産地として名をとどろかせてきた。奈良の春日大社や笑意軒、あるいは桂離宮の月波楼などの建築においても、木曽の木が屋根材として使われてきた。
忘却
かつて江戸と京都を結ぶ要所だった木曽町だが、20世紀の交通改革により、旅行者が時々足を伸ばすだけの観光地に変わった。今も列車の通過点ではあるが在来線のみで、東京と京都を結ぶ主要幹線は随分前から他の場所へ移動している。
再興
木曽町により、「木曽町役場本庁舎・防災センター」設計コンペが開催された。平常時は、事務手続きなどに訪れる住民が、足早に来ては去っていく通過点的な場所。災害時には、敷地全体が防災センターになり、同地域の避難所に転じる。
直線的な現役の鉄道路線となだらかなカーブを描く旧中山道とに挟まれた同用地は、現代における「高速の通過」と過去の「悠々たる交流」という二つの概念のはざまに位置するとFBAでは考えた。
我々はこの二つの概念をつなぐことで、未来に向かって開かれる建物を提案。西側のオープンスペースへ張り出す形で、東側の線路に沿って伸びる190メートルの細長い庁舎。美しい景観に向けて解き放たれる開口の角度に変化を持たせることで、新町役場は、木曽が育んできた有形・無形の遺産を復活させるための新しい息吹を体現しつつ、外へ外へと広がり行く旅をも彷彿させる設計となっている。同設計案では、地元の技術をおおいに活用ー単純な法則に従って、複雑な変容を伴う建築を目指した。木曽町は、数世紀に渡りその名を轟かせた技術資産である木材技術と職人技術をもって、自らの町役場を建てることになる。
(翻訳:山尾暢子)
中部地方木曽町, 2017
Type
Status
Team
フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 山野友嵩, ジェイミー エデン, テニーシャ ケイトン, 長田章吾, マックス マデック, 重村茉代
Size
延床面積: 2,500 m²
Garden: 3,590 m²