吉佐美のA邸
中部地方下田市, 2009—2012
「吉佐美のA邸」は、東京から約180キロ、伊豆半島最南端の海を一望できる別荘だ。吉佐美の海水浴場からほど近い丘に向かってつづら折りの細道を登っていくと、急勾配のてっぺんに建てたれたこの家にたどり着く。海の絶景に恵まれたこの家には、波の音まで届いてくる。
東京都心に子供2人と暮らす若い夫婦が依頼したのは、都会の日常と好対照をなす、趣味のアウトドアを楽しめるシンプルなリトリートだった。
敷地の大部分が30度の傾斜地にあり、平地は10分の1に過ぎないため、このプロジェクトの最初の仕事は斜面を切り取る作業になった。その結果できた台形の土地に小さい箱を、その上に大きめの箱を置けば、山の斜面に生まれた空間が家の中心にとって代わる。下の箱には寝室、上の箱にはリビングを配置し、箱と山の合間にできた空間にスパゾーンを設置した。洞窟からまっすぐに空に向かって伸びるスパイラル階段の空白の柱を中心に、二つの箱はその重量を否定するかのように、軽やかに旋回する。
物と物の間にできた空間が建物の重要部分になった時、建築の本質は「モノ」ではないことに自ずと気づかされる。
出来上がった家はその本質を体現している。外の空間が建物の中を通り、山を伝って、さらには海へと「A邸」は繋がっていく。
(翻訳:山尾暢子)
中部地方下田市, 2009—2012
Type
住宅
Status
竣工
Team
フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 雪聖子, 須藤朋之, ホルガーパウシュ (研修生)
構造: ARUP (笹谷真通, 竹内篤史)
設備: ymo (山田浩幸, 賀川尚美)
施工: 大同工業株式会社
Size
延床面積: 167 m²
テラス部分: 37 m² (including bathing exterior)
Structure
鉄筋コンクリート造
publications
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