R4
東京都港区六本木, 2013—2014
オフィス
数のみで判断するならば、今日の建築業界で最も優勢を誇る建物の種類として挙げられるのがオフィスと言えよう:
「オフィス」=「建物(とそのの中の部屋)」という概念は、事務機能を特定の建物空間に置くようになった16世紀に台頭した。そんな「オフィスビル」が、代名詞になるほど都市部を占拠することになるまで数世紀しかかからなかった。
20世紀に入り、どんどん新しいビルを建てることで手っ取り早い進歩を目指した都市部。高層のオフィスビル群がスカイラインのほぼ全体を占めるようになり、それが各都市の顔となった。
オフィスビルの設計やその高さが画一的である(オフィスビルが壮大で豪奢な建物であることは滅多にない)ことが、「ホワイトカラー(知識階層)の効率性」、すなわち「殆ど同じタスクを繰り返すことで仕事の効率は上がる」とする考え方を体現しているかのようだ。デスクがベルトコンベアに取って代わっただけだ。
オフィスは他のどのような建物よりも、その場所の政治的、社会経済的イデオロギーを最も顕著に反映する類の建築だと言えよう。
六本木
近年で最も大規模なオフィスビル建築の代表格と言える東京ミッドタウンと六本木ヒルズから徒歩至近、隠れた一等地に小さなオフィスビルの設計を頼まれた。FBAでは、未だ優勢を誇る画一的巨大オフィスビルと、それに対抗するドットコム会社のキャンパス風「オフィスが僕の/私のお家」的なナイーブな試みであるホームオフィスをじっくりと比較検討した。
R4のコンセプトについては、規模と立地が都市のオフィスタイプをどのように特徴付けるのか、またこのようなコンテクストの必要性が、自発的でカジュアルで、ひいては自然とも言える「労働効率性」を生む環境を実に完璧に反映するかもしれないという論点に立ち還りつつ検討した。
同プロジェクトのデザイン行程では、好立地にそぐわないガラクタの中にポツンと取り残された用地であること(狭い路地と見捨てられた墓地に挟まれ、高さ40メートルのビルと平凡な公園に脇を固められたこの土地は、多くの規制に支配されており、建設困難な用地であった)が重要性を増してきた。
このような課題に対し建築的観点から提供すべき解決策は、画一的なスタイルを踏襲した差別化なきオフィスビルでは有り得ない。FBAでは多種多様な焦点を集結することで、オフィスビルの全体的統一感を保つとともに、隠れた部分でも周辺環境に適応できるデザインを目指したいと考えた。
エンベロープ
4層という低さーこの条件からビルの経済性という観点において「反復」は優先課題から外れた。そこで、自己複写的な反復を超えたレベルで建物を大きなエンベロープでくるみ、構造分析と照明分析に基づき開口部を配置。すると「階」という四角四面な定義の意味は薄れ、建物が新たな次元に到達した:大きな枠組みでの統一感を保ちつつ、少しづつ変化する多様性を内在。建物のどの地点をとっても、ほかのどの地点とも異なるユニークな空間が見つけられる。
構造
このエンベロープは構造そのものだ。現代における理想的柔軟性を阻害すると思われた時代遅れの規制が、実は、この特定の状況下で有利に働いた。エンベロープが建物全体となり、間仕切りの壁や柱が不必要になる。エンベロープで囲まれた四つのユニットが各々フリースペースとなる。これにより、通常の構造+カーテンウォールという式をかなぐり捨て、エクステリア・エンベロープがあらゆるレベルで真価を発揮する。内部空間をフリーとし、外界とのフィルターとなり、荷重を支える。
このようにユビキタスな画一性から脱却することで、「他に可能性がない」という状況よりも「多くのニュアンスが可能だ」との次元に達する。
(翻訳:山尾暢子)
東京都港区六本木, 2013—2014
Type
Status
Team
フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 山脇ももよ, 宮本哲
構造: ASA (鈴木哲, 秋田宏喜)
設備: ymo (山田浩幸, 土屋なつみ)
環境: ymo (山田浩幸, 土屋なつみ)
施工: 株式会社 辰
Size
延床面積: 412 m²
Roof: 103 m²
Structure
publications
関連プロジェクト:
- R4, 2013—2014
- WHO 増築, 2014