高田馬場の家

東京都新宿区, 2010—2011

従来、人を守る為の家は外と遮断するようしっかりと壁で覆われたハコとして創られ、そのハコの中で人々は生活してきた。東京にはそのハコが所狭しと並び、互いの壁との間で無造作に残された、もはやどちらが内か外か分からない隙間がただ漠然と存在する。
高田馬場の家。間口3.7m長さ18m。地面から床→壁→天井→と一枚で構成されたこの家の中には仕切るものがない。

ましてや、外部とを視覚的に遮断する壁もなく延々に外へと空間が続いている。玄関を入り、上下をつなぐ螺旋階段を上って、様々な居室へと続く。
従来の壁の代わりに内部の壁には、静かに揺らぐ竹の陰影が映し出され、中からは、遠く見える都心のビル群や、この場所に根付く一本の大木が四季を通して変化を続けている姿を眺められる。開放性へ向かって本建物は蛇腹状のRC躯体と鉄骨柱により構成されている。鉄骨柱は主に長期荷重を負担するピン柱で、無垢の丸鋼とすることで径を抑えている。

鉄骨柱間の壁はせいの大きい梁として長期荷重を支持している。RC躯体の内部には壁・スラブと同厚の扁平な柱梁が設けられており、短辺方向の水平力はその柱梁がラーメンとして負担する。長辺方向の水平力には耐震壁が負担する。耐震壁のせん断力は、スラブを介して下階の耐震壁まで伝達される。その際、建物全体に生じるねじりに対しては短編方向の扁平な柱梁が抵抗する。この様な構造概念によって、開放された建築が実現する。

この家の内は常に流動的であり外を外部としてでなく、まわりの環境をも一連の物語として中に取り入れるのである。

本来、人間にとって素材・質が重要であるように家もまた同様である。化粧されたものを削ぎ落とし、素材が持つ可能性をこの土地におくことによって新しい変化が生まれるであろう。都心の隙間の中で、それらが持つ可能性と、人が住むという事と、外の環境が合わさりこの家はまたさらに流動的な発展を続けていく。

 

東京都新宿区, 2010—2011

Type

住宅

Status

竣工

Team

フロリアン ブッシュ, 宮崎佐知子, 山脇ももよ

構造: OAK (新谷眞人, 川田知典)

設備: ymo (山田浩幸, 土屋なつみ)

環境: ymo (山田浩幸, 土屋なつみ)

テキスタイル・デザイン: 安東陽子

施工: 藪崎工務店

Size

延床面積: 153 m²

テラス部分: 26 m²

Structure

鉄筋コンクリート造
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家
高田馬場の家

publications


関連プロジェクト: